コンクリート試験とは?スランプや空気量などについて解説
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この記事では、打設前の生コンクリートに対して行う試験とはどのようなものなのか、スランプや空気量、塩化物含有量、強度といった種類について説明するとともに、それぞれの項目において使用されるコンクリート試験機もご紹介しています。
こちらの記事は、2024年7月時点での基準をもとにして作成しています。
コンクリート試験とは
一般的なコンクリート試験とは、生コンが適度な流動性や材料分離抵抗性(ワーカビリティー:作業性)を持っており、硬化時に必要な強度と耐久性を出せるかどうかを確認するものです。
コンクリートの試験方法や品質基準は日本産業規格(以下、「JIS規格」)において「JIS A 5308:2019 レディーミクストコンクリート」で定められており、それを適切に満たすことで施工後の長期的な耐久性や強度を確保することができます。
その各項目について、この後から順番に解説していきます。
コンクリート試験の種類(スランプ・空気量・塩化物含有量・強度)を解説
先述のレディーミクストコンクリートのJIS規格では、試験する内容としてスランプもしくはスランプフロー、空気量、塩化物含有量、強度といった品質項目の許容範囲が示されているほか、容積や配合、材料、製造方法といった内容についても基準があります。
ここからは、コンクリートの各種項目について一つずつ解説し、現場でよく使われている機器もご紹介していきます。
スランプ試験
コンクリートの品質管理におけるスランプ試験は、コンクリートの流動性や施工性を評価するための重要な試験の一つです。生コンの流動性が適切でないと、打設時に型枠内で均一に拡がらず、構造物の品質が低くなってしまう可能性があります。そのため、施工前に十分に流動するかどうか、適切な流動性になっているかどうかを確認することが非常に重要です。
スランプ試験は、フレッシュコンクリートを円錐状のスランプコーンに詰め、コーンをそっと真上に引き抜いた時にどれだけ高さが下がるかという変形量=スランプを測定する試験です。コンクリートがやわらかいほど下がる量は多く、つまりスランプ値が大きければ流動性が高いということになり、小さければ流動性が低いということになります。
JIS規格ではこの値は購入者が指定する値に対して下記の表のような許容範囲が定められています。また、試験方法はJIS A 1101に準ずる必要があります
荷卸し地点でのスランプの許容差 (単位:cm)
スランプ スランプの許容差 2.5 ±1 5及び6.5 ±1.5 8以上18以下 ±2.5 21 ±1.5 注a) 注a) 呼び強度27以上で、高性能AE減水剤を使用する場合は、±2とする。
出典:日本産業規格 JIS A 5308:2019 レディーミクストコンクリート
また、流動性が高いコンクリートの場合は、どれだけ広がったかという直径を表すスランプフロー値を用いて評価が行われ、JIS A 1150に沿って試験を行う必要があります。
荷卸し地点でのスランプフローの許容差 (単位:cm)
スランプフロー スランプフローの許容差 45、50及び55 ±7.5 60 ±10
出典:日本産業規格 JIS A 5308:2019 レディーミクストコンクリート
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空気量試験
コンクリートの品質管理における空気量試験は、コンクリートの中に混ざっている空気の量を測定する試験です。コンクリートの含有空気量は硬化後の耐久性や強度を大きく左右し、多いと施工性は上がるものの多すぎると強度が不足する可能性があるため、適切な値を保持することで凍結融解や収縮によるひび割れの軽減が期待できます。
こちらはJIS A 1128、JIS A 1118またはJIS A 1116のいずれかに基づいて試験を行います。
荷卸し地点での空気量及びその許容差 (単位:%)
コンクリートの種類 空気量 空気量の許容差 普通コンクリート 4.5 ±1.5 軽量コンクリート 5.0 ±1.5 舗装コンクリート 4.5 ±1.5 高強度コンクリート 4.5 ±1.5
出典:日本産業規格 JIS A 5308:2019 レディーミクストコンクリート
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塩化物含有量試験
コンクリートの品質管理における塩化物含有量試験は、鉄筋コンクリートの内部で鉄筋の腐食を引き起こす可能性のある塩化物イオン(Cl-)の濃度を測定する試験です。塩化物の含有量を適切に管理することで、構造物の長期的な安全性と耐久性を確保することができます。
JIS A 5308ではコンクリート中の塩化物イオン濃度の基準は「0.30kg/m3以下
」であることとされており、試験方法についてはJIS A 1144で定められています。
出典:日本産業規格 JIS A 5308:2019 レディーミクストコンクリート
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強度試験
コンクリートの強度試験は、テストピースに供試体を採取し、決められた材齢(指定がない場合は28日、もしくはコンクリートの購入者が指定した日数)で圧縮強度を測定する試験です。この時点での圧縮強度の値が呼び強度以上であれば、そのコンクリートは強度の条件に合致しているということになります。試験のやり方は、JIS A 1108、JIS A 1132および附属書Eで示されています。
a) 1回の試験結果は,購入者が指定した呼び強度の強度値※の85 %以上でなければならない。
b) 3回の試験結果の平均値は,購入者が指定した呼び強度の強度値※以上でなければならない。
※呼び強度に小数点を付けて,小数点以下1桁目を0とするN/mm2で表した値である。ただし,呼び強度の曲げ4.5は,4.50 N/mm2である。
出典:日本産業規格 JIS A 5308:2019 レディーミクストコンクリート
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コンクリート試験とは?スランプや空気量などについて解説 まとめ
ここまでコンクリート試験とは?ということについてご説明し、コンクリートの品質と性能を確認するために実施される重要なプロセスであることがお分かりいただけたと思います。スランプ試験、空気量試験、塩化物含有量試験、強度試験によってコンクリートの流動性や内部の微細な空気の量、塩化物イオンの量、そして最終的な強度を評価し、そのコンクリートが適切な品質であるかどうかを確かめることが、構造物の安全性や耐久性を担保するうえで非常に重要となります。
このページでは打設前の生コンクリートの試験についてご紹介しましたが、その後の工程であるコンクリートの養生管理についてご説明している記事もありますので、ぜひそちらもご覧ください。