シックハウス症候群とは
シックハウス症候群とは、新築あるいは改築した家に入居した人から、「目がツーンとする」、「頭やのどが痛い」、「ゼイゼイする」といった症状が出ることがあり、社会問題となっていました。また、平衡感覚の失調や呼吸器疾患などに発展する場合もあるといわれています。
症状の原因
これらの症状は住宅の高気密化や化学物質を放散する建材・内装等の使用による室内空気汚染が原因と考えられており、厚生労働省による原因物質の特定と室内濃度の指針値が発表されています。
しかし、症状の発現には、家具・日用品等からの特定物質の影響や、カビ・ダニ等のアレルゲン、化学物質に対する感受性の個人差など、さまざまな要因が複雑に関係していると考えられています。なお、シックハウスという言葉は和製英語で、欧米ではシックビル症候群(Sick building syndrome; SBS)と呼ばれています。
また、2003年 建築基準法の改正により
建築材料をホルムアルデヒドの発散速度によって区分し使用を制限。
換気設備設置の義務付け。
天井裏等の建材の制限。
などが定められています。
室内濃度指針値
わが国では、厚生労働省、国土交通省等の関係省庁が協力して「原因分析」「基準設定」「防止対策」等のシックハウス総合対策を行っています。厚生労働省は、ホルムアルデヒド、トルエン、パラジクロロベンゼン、クロルピリホス、フタル酸ジn-ブチル等13物質の室内濃度指針値を設定しています(表1)
これらのうち、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンの4物質は、実態調査の結果、一部の住宅で非常に高い汚染が認められたことを受けて、最初に指針値が設定されました。ホルムアルデヒドの指針値は、短期間の暴露、すなわち、一般的な人達における鼻やのどに対する明らかな刺激感覚を防ぐことを指標として設定されました。
これに対して他の3物質の指針値は、長期間の暴露によって起こる毒性を指標として設定されました。具体的には、トルエンではヒト暴露における神経行動機能及び生殖発生への影響、キシレンでは妊娠ラット暴露における出生児の中枢神経系発達への影響、パラジクロロベンゼンではビーグル犬暴露における肝臓及び腎臓等への影響に基づいて指針値が設定されています。
上記4物質以外の9物質(アセトアルデヒド、エチルベンゼン、スチレン、テトラデカン、クロルピリホス、ダイアジノン、フェノブカルブ、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)の指針値は、現状において入手可能な科学的知見に基づき、人がその化学物質の示された濃度以下の暴露を一生涯受けたとしても、健康への有害な影響を受けないであろう濃度として設定されました。
また、室内空気質の総揮発性有機化合物(Total Volatile Organic Compounds; TVOC)の暫定目標値が400μg/m3と設定されています。
この数値は、毒性学的知見から決定されたものではなく、室内空気質の状態の目安として利用されることを期待して設定されました。
この暫定目標値は、竣工後居住を開始してある程度時間が経過した状態における目安です。